事実婚・契約結婚

目次
事実婚・契約結婚とは?メリットとは?
近年、多様化する生き方や価値観を反映し、法的な婚姻関係によらない事実婚や契約結婚という選択肢に注目が集まっています。これらの形態は、従来の結婚制度とは異なるアプローチで、カップルそれぞれのニーズや希望に合わせた柔軟な関係性を築くことができます。
事実婚と契約結婚:それぞれの定義と違い
事実婚と契約結婚は、従来の法的婚姻とは異なる形でのパートナーシップを実現する方法です。両者には重要な違いがあり、それぞれの特徴を理解することで、自分たちに合った形態を選択することができます。以下では、それぞれの定義と特徴、そして内縁との違いについて詳しく解説します。
事実婚とは
事実婚とは、法的な婚姻届を提出せずに、実質的な夫婦としての生活を営む関係を指します。お互いを生涯のパートナーとして認め合い、共同生活を送る点では法的な結婚と変わりませんが、戸籍上の関係は変化しません。事実婚を選択するカップルの多くは、既存の結婚制度にとらわれない自由な関係性を望む場合や、再婚における年金の問題を回避したい場合などが多いとされています。
事実婚カップルは、互いの愛情と信頼関係に基づいて生活を共にし、社会的にも夫婦として振る舞います。ただし、法的な保護を受けられない部分も多いため、お互いの権利と義務を明確にしておくことが重要です。
契約結婚とは
契約結婚は、両者の合意のもと、明確な契約書を作成して結婚生活を送る形態です。契約書には、財産管理、家事分担、子育ての方針など、具体的な取り決めを記載します。これにより、お互いの権利と義務が明確になり、将来的なトラブルを予防することができます。
契約結婚の特徴は、感情的な要素だけでなく、実務的な側面も重視する点にあります。例えば、キャリアを継続したい女性と、家事のサポートを必要とする男性が、お互いのニーズを満たすために契約結婚を選択するケースなどが挙げられます。
事実婚のメリット・デメリット
事実婚には、従来の法的婚姻とは異なる特徴があり、それに伴うメリットとデメリットが存在します。カップルの状況や価値観によって、これらの要素の重要性は異なってきますので、慎重に検討することが大切です。
メリット:自由な関係性、経済的メリットなど
事実婚の最大のメリットは、法的な制約にとらわれない自由な関係性を築けることです。具体的には以下のようなメリットがあります。
年金に関するメリットとして、配偶者の年金を受給しながら事実婚のパートナーと暮らすことができます。特に高齢者の再婚では、この点が重要な検討材料となることが多いでしょう。また、住民税の計算においても、法的な婚姻関係がないため、それぞれが独立した納税者として扱われます。
名字も旧姓のまま保持できるため、仕事上の不便さを避けることができます。特にキャリアを築いている女性にとって、この点は大きなメリットとなります。さらに、結婚式や親族への挨拶など、従来の結婚に付随する社会的な儀式や経済的負担を避けることもできます。
デメリット:法的保護の不足、社会的な認知度の低さなど
一方で、事実婚には以下のようなデメリットも存在します。
法的な保護が限定的である点が最大のデメリットです。例えば、パートナーが亡くなった場合の相続権が認められず、共に暮らした家への居住権も保証されません。また、医療機関での手術の同意や、入院時の面会などにおいても、法的な家族として扱われないケースが多いです。
項目 | 法的婚姻 | 事実婚 |
---|---|---|
相続権 | あり | なし |
配偶者控除 | 適用可 | 適用不可 |
住宅ローン | 共同申請可 | 一定条件はあるが可能な金融機関が増えてきている |
健康保険の扶養 | 可能 | 一定の条件を満たせば可能な場合あり |
契約結婚のメリット・デメリット
契約結婚は、明確なルールに基づいた関係性を築くことができる一方で、感情面での課題も存在します。以下では、具体的なメリットとデメリットについて解説します。
メリット:明確なルール設定、リスクヘッジなど
契約結婚の最大のメリットは、関係性における権利と義務が明確である点です。例えば、
財産管理や家事分担、育児方針などについて、事前に詳細な取り決めができるため、将来的な争いを防ぐことができます。また、別居や解消時の手続きについても、あらかじめ定めておくことで、スムーズな対応が可能となります。
キャリアの継続や個人の生活スタイルについても、契約内容に明記することで、お互いの理解と協力を得やすくなります。特に、仕事と家庭の両立を目指す場合には、この点が重要となってきます。
デメリット:感情的な問題、契約内容の難しさなど
契約結婚特有の課題として、以下のような点が挙げられます。
感情面での変化に対応が難しい点が最大の課題です。例えば、愛情が深まった場合や逆に薄れた場合など、契約時には想定していなかった感情の変化に対して、契約内容が足かせとなる可能性があります。
また、契約内容の詳細な設定には専門的な知識が必要となり、弁護士等への相談費用も発生します。さらに、契約内容の解釈をめぐって争いが生じる可能性もあります。
要素 | 契約結婚 | 一般的な結婚 |
---|---|---|
権利義務の明確さ | 非常に明確 | 慣習に依存 |
感情面の柔軟性 | 低い | 高い |
初期費用 | 契約作成費用必要 | 婚姻届のみ |
修正の容易さ | 契約変更手続きが必要 | 話し合いで調整可能 |
事実婚・契約結婚における法律上の権利と義務
事実婚や契約結婚を選択する場合、法的な権利や義務について正しく理解しておくことが重要です。法的な婚姻関係がない分、特に注意が必要な点や、事前に対策を講じておくべき事項があります。
相続、税金、社会保障
事実婚・契約結婚における最も重要な法的課題の一つが相続に関する問題です。法定相続人としての権利は認められないため、以下のような対策が必要となります。
遺言書の作成は、パートナーへの財産継承を確実にする最も確実な方法です。公正証書遺言を作成することで、パートナーへの財産分与を法的に保証することができます。また、生命保険の受取人にパートナーを指定することで、死亡時の経済的保障を確保することもできます。
税制面では、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されないため、税負担が増加する可能性があります。
財産分与、子どもの親権
財産分与については、法的な婚姻関係がないため、離別時の財産分与請求権は原則として認められません。そのため、以下のような対策が重要です。
事前に財産分与に関する契約を締結しておくことで、関係解消時の財産分配について明確なルールを設定できます。特に、共同で購入した財産や、一方が他方の生活を支援することで得られた財産については、詳細な取り決めが必要です。
事実婚期間中の親権は母親が単独で持つこととなります。子供を持つ場合は以下の点に注意が必要です。
- ・父親の場合、認知手続きが必要
- ・父親が親権を持つためには、法律的な手続きや父母間での同意が必要
事実婚・契約結婚を選択する際の注意点
事実婚・契約結婚を選択する前に将来設計に関する合意形成が重要です。例えば、キャリアプランや居住地の選択、子育ての方針など、生活の重要な局面における価値観の共有が必要です。また、家族や友人との関係性についても、お互いの考えを確認しておくことが望ましいでしょう。
経済面での取り決めも重要なポイントとなります。
- ・日常的な生活費の分担方法
- ・将来の資産形成に関する計画
- ・万が一の場合の経済的保障
- ・老後の生活設計
事実婚・契約結婚の体験談:リアルな声
実際に事実婚・契約結婚を選択したカップルの声をご紹介します。

Aさん(女性、30代)
キャリアを継続しながら、お互いの生活も大切にできる関係性を築けていると感じます。今後、二人の間でライフプランが変更したときには柔軟に対応できると思っています。

Bさん(男性、40代)
色々と考えて法的な婚姻は避けたかったのですが、事実婚を選択したことで柔軟な生活設計が可能になりました。
メリットとして挙げられた点 | デメリットとして挙げられた点 |
---|---|
自由な生活設計が可能 | 行政手続きの煩雑さ |
経済的な柔軟性 | 周囲の理解を得るまでの苦労 |
個人の生活の尊重 | 法的保護の限界 |
キャリアの継続のしやすさ | 将来への不安 |
自分に合ったパートナーシップの形とは
事実婚・契約結婚は、従来の法的婚姻とは異なる選択肢として、多様化する現代社会におけるパートナーシップの形の一つです。これらの選択を検討する際は、お互いの価値観や生活スタイル、将来設計などを十分に話し合い、自分たちに最適な形を見つけることが重要です。
また、制度や社会の理解は徐々に進んでいますが、まだ課題も多く残されています。そのため、事前の準備と対策を十分に行い、必要に応じて専門家への相談も活用しながら、安定した関係性を築いていくことが大切です。

PROFILE
結婚相談所の代表カウンセラーとして約10年間、200名近くの成婚者を輩出。所属協会からは成婚優秀賞や入会優秀賞などを受賞。お客様一人ひとりに寄り添い、最適なパートナー探しをサポートすることに情熱を注いでいます。
監修者:結婚相談所アイビジョン代表カウンセラー 小島千恵